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創作から興味ある事柄まで気まぐれに綴ります
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  <2.助手の危機>


 その日、古辺の言う通りに行動した新垣は、少し早めに休む事にした。
 明日はいつもより早く大学の授業に出なければならないし、尾行に警戒しつつ帰宅した事が、彼をひどく疲れさせていたのである。
 しかし、いざ寝床に入ると中々寝付けなかった。
 今回の件は、別段気にする程でも無いと感じる事象なのだが、古辺は何故あんなに警戒するのか。
 普段は何事ものんびりと構える古辺を知っているだけに、一層それが気になるのだ。
 寝付けない理由はもう一つある。
 新垣はいま、就学中の住まいとして古アパートの二階に住んでいるのだが、ここには同じ大学へ通う友人が二人居た。
 彼らとテイクアウトの夕食を共にする時、今日の事をうっかり話してしまったのだが、腕に覚えのある二人は賊が侵入したら自分達が捕らえると言って聞かなかった。
 友人の一人はちょうど隣に住んでいたので、今晩は部屋を取り替えて待ち伏せするというのだ。
 申し出を断り切れなかった新垣は、いつもと違う部屋である事と、知り合いが隣で賊を待ち構えている事が気になって仕方ないという訳である。
 それから数時間が経過した、午前一時過ぎ。
 瞼が次第に重くなりようやく眠りに入ろうかという頃、アパートの階段をゆっくりと上がって来る音がした。
 彼らの部屋は二階の中ほどで、新垣の寝ている所はより階段に近い位置にある。
 このアパートには一階・二階共に学生ばかりが住んでいるので、遅くなった住人が迷惑を掛けまいと静かに階段を登っているのかも知れないが、古辺の忠告があるだけに断定はしかねた。
 外に居る人物は明らかに忍び足であり、迷惑を考慮しているにしても少しゆっくり過ぎはしないか。
 そうしているうちに相手はとうとう階段を登り切り、相変わらず慎重な足取りでこちらに近付いてくる。
 隣の友人達はこの事を感づいているのだろうか、と新垣は心配になった。
 彼らは夕食時に缶ビールを数本開けていたし、酔った勢いでの考えだけに、目的など忘れて寝ていてもおかしくない。
 すぐそこを歩いているのが賊の類なら、早急に知らせてやらねばならないが…。
 こんなときドアに鍵穴でもあれば外の光景が窺い知れるのだが、あいにく中側からはツマミを捻ってロックする仕組みになっている。
 新垣は意を決して布団から抜け出し、気取られる事の無いように注意しながら、ドアの方へと向かって行った。
 謎の人物は、ちょうど部屋の目の前を通過する所だ。
 外の気配に耳を澄ます新垣に緊張が走り、心臓の高鳴りは自分でも驚くほどである。
“ブーン”
 出し抜けに後ろから響いた音に、彼は飛び上がらんばかりに吃驚した。
 それは携帯電話が着信を知らせる振動音で、慌てた新垣は我を忘れてそれを引っ掴む。
 相手は果たして古辺であった。
『すぐにアパートを出るんだ、新垣くん!そして一番近くの交番に向かい給え!』
 だが、それは寸前の所で間に合わなかった。
 隣の部屋、つまり本来は新垣が住んでいる部屋から、ドアを蹴破るけたたましい音が聞こえたのである。
 そして次の瞬間、ギャーッと言う悲鳴が耳を襲う。
 数名の者達が格闘する激しい音と振動が、老朽化したアパート全体を揺らしているかの様だ。
 この組み合う音は1分ばかり続いたが、やがてドアが乱暴に開き、誰かが走り去って行くのが分かった。
 隣からは低い呻き声と共に、しっかりしろと言う声が聞こえている。
 仮にも犯罪研究所と名のついた所に勤める新垣だったが、一連の出来事に体が言う事を聞いてくれない状態であった。
『新垣くん!何かあったのか!』
 手にダランと持った電話からの声に、彼はようやく我に返った。
「所長、誰かが僕の部屋を襲った様です。僕は無事ですが、知り合いがやられた様です。賊は逃げたんですが…後を追いましょうか?」
『いや!危険だから追ってはいけない。僕はいま警察に居るから、盤場警部と一緒にすぐそちらに向かう。救急車も手配しておくから、そこでジッとしていたまえ』
 こうして恐怖の夜は更けて行ったのである。



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  <1.探偵登場>


 H市の西外れに低くそびえる歩見山の麓に、二階建てのみすぼらしい小さなビルがある。
 ビルと言っても一階に一つ・二階に二つの部屋があるきりで、後ろに迫る雑木林には押し潰されそうだし、周りは休耕田が広がるばかりという何とも侘しい風体だ。
 そしてこの二階に事務所を構えているのが、『古辺犯罪研究所』の所長こと古辺玲四郎(こべ・れいしろう)その人なのである。
 
「何とも不思議だ」
 窓際を背に設置された古い書斎机に新聞を放り出すと、古辺は独り言の様に言った。
 それを聞いたアルバイト助手の新垣真人(にいがき・まこと)は、携帯型ゲーム機に興じる手を休めてソファーから身を起こした。
「ああ、一昨日の夜に出崎町で老夫婦が殺された事件ですか。確か動機が全く見当たらなくて、金品も手付かずなんですよね」
 助手の言葉に、古辺はニヤリと笑った。
「これは昨日の新聞だよ、新垣くん。僕が不思議だと言ったのは、もうすぐ午前10時だというのに今日の朝刊が来ていない事さ」
「えっ、そうなんですか。では販売店に電話してみましょうか?」
 新垣がテーブルに置いてある自分の携帯電話に手を伸ばした。
 この事務所には電話が無いのである。
「それもいいが、どうせ暇を持て余しているのだし、なぜ今朝に限って新聞が届いていないのか一つ考えてみようじゃないか」
 古辺はそう言うと、自分もソファーに移って来た。
「かれこれ一年近く、ここへ新聞を配達して来るのはいつも同じ人物だ。君も何度か見て知っているだろう。首に青いタオルを巻くのがトレードマークの、年中浅黒く日焼けした青年だ。彼が新聞を配達し損ねた事は一度も無い。このビルは住宅地から離れている為わざわざ回り道せねばならず、それが返ってここを深く印象付けているんだろう。だが、今朝は玄関の郵便受けに何も入っていなかった」
 所長の提案に助手はしばらく思いを巡らせていたが、やがて言った。
「配達員も店も、うっかり忘れているだけじゃないでしょうか。いつもの配達員が休んでいて、代わりに出た人間がここへ寄るのを忘れた可能性もありますし」
「まず頭に浮かぶのは最初の方の意見だね。単に忘れたせいという理由さ。しかし、第二の謎がこれに疑問を投げ掛ける。“なぜ郵便受けの底に血痕があるのか”というのがそれだ」
「血痕ですって!」
 新垣が素っ頓狂な声を上げた。
「うむ。と言っても血溜りなどではなく、血を擦った様な痕があるだけなんだがね。夕刊を取った時に異常は無かったので、血が付いたのは昨日の午後4時過ぎから今日の午前7時過ぎの間という事になる」
 古辺はそう言うと机の方へ戻り、一番大きな引き出しから膨らんだ大判封筒を取り出して見せた。
 その中には、問題の郵便入れが収められているらしい。
「この郵便入れは、念の為に知り合いの盤場(ばんじょう)警部に渡して調べて貰おうかと思っている。いや、玄関には以前新聞を取っていた時の郵便入れを掛けておいたから心配ない。青と紺の違いはあるが、同じビニール製のお手軽タイプさ」
 しかし、助手はどうも負に落ちない様子である。
「僕には、蓋を開けてみれば他愛も無い理由だったという事になりそうな気がします。それに新聞店に配達したかどうかの確認をとるのが、一番効率が良いのでは?」
「事件性が無いならそれでいいんだよ。これは直感というヤツでね。暇を持て余した専門家には…おや、誰か来たようだ」
 確かにドアをノックする乾いた音が、コンコンと響いている。
「僕が出ましょう」
 新垣はソファーを飛び越すや、急いで事務所のドアを開けた。
 彼は何者かと一分足らず話をしていたが、やがて笑みを浮かべながらドアを閉めた。
 手には新聞と包装紙が巻かれたタオルが握られている。
「新聞店の人でした。やはり配達ミスだった様で、平謝りしていましたよ。うちは電話が無いもんだから、事前に連絡せずに直接来たそうです。これで謎の一つは解けましたね」
 その声を背後に聞きながら、古辺は西へ遠ざかる自転車を眺めている。
 彼の口元は段々と不敵に緩んで行き、それは新聞店員が見えなくなるまで続いたのだった。
「新垣くん」
 ようやく助手の方へ振り向いた古辺の表情は、いつに無く真剣であった。
「君に詫びを言ってそれを渡した人物は、いつもの日焼けした青年かい?」
「いえ、初めて見る人でした。二十代前半の真面目そうな青年でしたよ」
 不審気に相手を見ながら、助手は言った。
 それを聞いた古辺は、考えをまとめる時にいつもそうする様に、机の周りを行ったり来たりし始めた。
 そして数分後、何かを決断した様子で新垣に言い放ったのである。
「僕は今から出掛けるから、君も昼前には帰りたまえ。アパートに着くまでそれとなく尾行に用心するのが大切だが、あくまで自然に振舞うのも重要だよ。着いたら、今日はどこへも行かずに部屋へ篭るんだ。くれぐれも戸締りを忘れずに。明日以降の事は、また携帯電話に連絡する。僕の些細な疑念が、思い過ごしであればいいんだが」
 未だ功無き犯罪研究家は、助手にそう言い残して足早に事務所を出て行った。



 『モンスターハンター3G』は、2011年末に発売されたニンテンドー3DS専用ソフトである。以前Wii向けに『モンスターハンター3』が出ているが、これは事実上その強化版と考えていいだろう。
 モンスターハンターの人気に火が点いたのは、PSP向けに出たモンスターハンターポータブルのシリーズからで、『モンスターハンターポータブル3rd』に至っては国内だけで400万本を超える大ヒットとなった。
 プレイしてみて分かるのはその難易度の高さで、やたらと体力のある動きの激しいボスモンスターを相手に立ち回りながら、カメラの切り替え・攻撃・回復も同時にこなして行かなくてはならない。しかも、モンスターによって色々特性が違うので、予備知識の習得も必須である。これに加えて時間制限まであるというのだから、それほどゲームの上手くない人が話題性に釣られて買うと、まずクリア不可能と言ってよい。私自身、50分間も気の抜けないプレイを強いられた挙句、ボスモンスター討伐を目前にしながら時間切れになった時の疲労感と喪失感に、二度とこのゲームには手を付けるまいと誓った事さえあった。実際、人気だからと手を出したものの、途中で投げ出すユーザーが相当数あるのだとか。
 ただ、勝つ為にいろいろ工夫する事を覚えれば、いつの間にか上達して何とかボスモンスターを倒せる様になっていて、この辺のバランスはゲーム黎明期を髣髴とさせる硬派さだ。また、他の上手いプレイヤー(最大4人まで同時プレイ可能)と一緒にプレイしてクエストをクリアする手段があり、この携帯ゲーム機を持ち寄っての楽しさが、PSP版の大ヒットに繋がった重要な要因だろう。
 冒頭でも述べた通り、タイトルの最後に『G』と付いているのは、新モンスターや新アイテム等が追加された強化版である事を指す。実はPSPの『モンスターハンターポータブル3rd』は、多くの部分をWiiの『モンスターハンター3』から流用しており、3DSの『モンスターハンター3G』は更に両者と多くの共通部分を持つ。
 3DS版最大の特長は、裸眼3D対応とタッチスクリーン操作の導入だ。前者には、迫力が増すと同時に、3Dに見える事によって自分と敵との距離感を測り易くなったメリットがある。特に水中での戦いには有効で、攻撃がヒットする確率が上昇した人も多いだろう。後者のメリットはもっと大きく、タッチスクリーン上の各アイコンを自分の好きな配置にカスタマイズ出来る。このゲームに重要なカメラの視点切り替えも、タッチスクリーンに表示された仮想の十字ボタンを操作して行うのだが、タッチ一つでボスモンスターを画面中央に捉える『ターゲットカメラ』機能も非常に便利だ。
 確かにモンスターハンターシリーズの本編ソフトを全クリアするとなれば、挫けそうな難易度の高さを乗り越える必要があるし、膨大な時間を費やすのも避けられない。このゲーム最大の目的は、気に入った武器・防具・装飾品などを揃える事だろうが、その為の技術的・時間的ハードルは相当な物である。
 しかし、その地道な工程が思いのほか楽しいからこそ、これだけ支持されているのだろう。多人数プレイして丁度良い難易度になっているので、可能ならこれを活用するのが一番手っ取り早いし、何よりも一番面白い遊び方である。



 バイオハザード・リベレーションズ(以下BHR)は、ニンテンドー3DS向けに製作されたソフトで、バイオハザード4と5の間に起こった事件が描かれている。
 ナンバリングタイトルでは無いものの、コードベロニカと同じく準本編に近い力の入れ具合で製作されたようだ。
 主人公は3以来の主役となるジル・バレンタインで、対バイオテロ組織『BSAA』のメンバーとして、同僚と共に仲間の救出に向かう所から物語が始まる。
 このソフトが高い評価を受けているのは、バイオハザードシリーズが久し振りにサバイバルホラーへ原点回帰したのが大きい。
 それも話が進むに連れて弱まるのだが、“ウーズ(深海生物と人間を融合させた様な異形の者)”という神出鬼没のクリーチャーを導入した目新しさもあって、少なくともシリーズの停滞感を弱める事は出来たであろう。
 あえて詳しくは書かないが、敵の特定部位を武器で攻撃して怯ませ、隙が出来た所に体術を決めて弾丸の消費を抑える近年のお約束は、BHRでは中々通用しない。
 3DSのスペック的な制限を逆手に取り、ある程度広さのある空間で大勢の敵を撃退する方向から、動きの取り辛い狭い空間で限られた数の敵を相手にする仕様へ変えたのは上手いやり方だった。
 操作方法も先に3DSへ出した『バイオハザード・マーセナリーズ3D』の物を進展させ、移動中のリロードだけでなく武器を構えながらの移動も可能となっている。
 また、武器を構えた時の視点を三人称と一人称から選べるのも新しい試みだ。
 武器を構えながらの移動は視点が固定されるが、照準選択でジャイロセンサーを選ぶと、3DS本体を動かして自由に視点を変えながら構え移動OK。
 近作ではお約束となったマーセナリーズは無いものの、本編とは独立したレイドモードという1人~2人でプレイ可能(オンラインにも対応)なモードが存在している。
 5では一度クリアしたステージを好きな装備で何度も挑戦出来たが、レイドモードは好きなステージを複数のキャラクターから選んで遊べるのだ。
 装備出来る武器は最大3つまで、カスタムパーツを装着して強化するというシステムは本編と同じだが、銃(レベルあり)・カスタムパーツ・弾薬・各種グレネード・ハーブを稼いだポイントで決められた上限まで購入出来る点が異なる。
 制限時間が無いので協力プレイ向きだし、好きなキャラクターや武器で任意のステージを楽しめるので、これぞバイオハザードファンがやりたかったモードではないかと思う。
 残念ながら最新作の6にレイドモードは無いが、今後出すバイオハザードにまた採用して貰いたい。
 『バイオハザード・リベレーションズ』は3DSソフトの中ではトップレベルのグラフィックであり、内容的にも本編にそう劣らないクオリティーなので、ハードを所有している人には是非プレイして欲しいタイトルである。


 『ゼルダの伝説・スカイウォードソード(以下Sソード)』は、2011年末に発売されたWii専用ソフトである。
 『ゼルダの伝説』は25年に渡って続く任天堂の看板タイトルの一つで、売上こそマリオやポケモンに及ばないものの、同社が持てる力を最大限に注ぎ込む象徴的ソフトに位置付けられている。
 ゼルダの伝説はじまりの物語を描く今作だけに、冒頭部分はムービーシーンを多用して細かく描写しているが、皮肉にもこれが従来のファンに受けが悪かった。
 これは発売直前にネット放送に出演した任天堂のプロデューサーも自覚しており、「今作は自由に操作出来るまでの時間が長く、ユーザーの気持ちが離れてしまわないか心配している」との懸念を漏らしている。
 ゼルダシリーズのファンでありながら、冒頭をプレイしただけで駄作の評を下し、遊ばなくなってしまった人も多いようだ。
 確かに私も最初は戸惑いを感じたが、冒頭以降は逆にムービーシーンが恋しくなるほど最小限に留められているし、クリアした後で再度プレイすれば以前は煩わしかった冒頭部分までもが愛おしく感じられて来るほどであった。
 またゲームシステムも大きく進化。
 Wiiリモコンプラスによって任意の方向や角度から攻撃出来るし、盾で相手の攻撃を弾く事が可能になったので、戦闘のバリエーションがグンとアップしたのだ。
 更にダッシュ&がんばりゲージの導入で、移動系のアクションも多彩かつスムーズになった。
 従来の注目システムやオートジャンプも含め、究極の操作形態に近づいたのではないだろうか。
 一方、残念な点も僅かだが存在する。
 一つは投射系武器が剣での操作を重視しポインティングではなくなった為、追随性の低下や照準のズレが生じる様になってしまった事。
 もう一つは敵が大量に出現したり連続で戦う場合、倒すためにリモコンを振っていると流石に疲れてしまう事だ。
 後者の様な場面は極僅か(私は2回のみ)とはいえ、ちょっとキツイ気がした。
 ネタバレはしたくないのでどうしても抽象的な表現になってしまうのだが、Sソードは間違いなく傑作である。
 『ムジュラの仮面』や『夢をみる島』を超えて、個人的には一番好きなゼルダの伝説かも知れない。
 そういうファンは少なくないだろうし、未プレイ或いは途中でやめたファンもクリアしてみれば必ずお気に入りの作品になると思う(シリーズの根幹に関わる設定が幾つか加わっているので、これを認識しているか否かは結構重要だと思われる)。
 操作キャラでは無いにもかかわらず、今作の主人公はゼルダであると言っていい。
 彼女がタイトルに冠されるに相応しい存在となった作品、それが『ゼルダの伝説・スカイウォードソード』である。



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