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創作から興味ある事柄まで気まぐれに綴ります
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 当ブログでは金田一耕助シリーズの映画を幾つか紹介したが、今回は古谷一行が金田一に扮するテレビシリーズの『犬神家の一族』について書いてみようと思う。

 これは同シリーズの初陣を飾る作品であり、犬神佐清と野々宮珠世のキャストに多少違和感を覚えるものの、テレビドラマらしからぬ見応えのある内容になっている。

 原作の金田一耕助に最も近いと評される古谷一行の役作りは、髪型が少々短めな以外この一作目から既に固まっていて、風采は上がらないが味のある人懐っこい着物姿の探偵を上手く表現している。


 ユーモラスで人好きのする点では、映画版『悪魔が来りて笛を吹く』で金田一を演じた西田敏行と似ていなくもない。

 古谷氏以外も好演の光る本作だが、中でも特筆すべきなのが松子夫人を演じた京マチコで、犬神佐兵衛の写真を前に紙片を焼くシーンの凄味は格調高いとさえ感じた。

 彼女の瞳は非常に特徴的なので、静かな演技でも目を見開いたような効果が出せるのだ。

 映画で同じ役を熱演した高峰美枝子や富司純子も大変良かったが、京マチコのそれはテレビドラマの枠を超えるものだった。


 また市川崑監督の『犬神家の一族』のそれと違って、佐清のマスクが能面をモチーフにしたデザインになっており、顔にピッタリと張り付く感じでは無く石膏を思わせる強張った印象を与える素材になっている。


 これはテレビ版独自の演出だが、他にもある人物が本物の能面を被る事からして、着用者の性質を表す象徴として用いている様だ。

 またオリジナル要素としては、犬神佐兵衛の謎めいた出自に触れている点にも注目したい。


 犬神の血に呪わしい過去があるという少々オカルトめいた設定だが、特徴的なナレーションと惨たらしい絵巻で短く綴ったこのシーンは、中々に効果的だったのではないかと思う。

 最も大きな変更は結末の部分で、原作では半ば人情味を帯びた形で大団円風に幕を閉じる『犬神家の一族』も、テレビシリーズで描かれた終幕は珠世により現代的な行動を取らせる内容であった。

 映画版に比べると、このテレビシリーズの『犬神家の一族』を観た人は少ないだろうが、映画にも劣らぬ豪華な出演人を見るにつけ、金田一耕助譚の人気が当時いかに高かったかを窺い知れる。

 私は古谷一行演じる金田一耕助テレビシリーズのDVDを概ね所有しているので、機会があれば今後も紹介して行きたい。


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