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創作から興味ある事柄まで気まぐれに綴ります
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今回は1979年公開の「金田一耕助の冒険」に触れてみたいと思う。

角川製作の金田一映画として一区切りつける予定だった本作は、低予算かつパロディー満載の悪ノリ感に満ちた怪作である。

これらは敢えてそう作られているのだが、面白がられるより当惑されたり呆れられることの方がずっと多かったようだ。

実際、早送りなしに最初から最後までこの映画を観続けるのは、大抵の人にとって苦痛かも知れない。

パロディーやギャグ演出が笑えないのはともかく、コメディーとはいえミステリーとしての筋立てが初見では掴みにくいので、置いてけぼり感を拭えないまま最後を迎えてしまうのだ。

これは黒板に書かれている意味が分からずに授業が進んでいく感覚に似て、物語の柱となる要素が理解し辛くては観る者の関心を誘うのは難しい。

監督の大林宣彦氏は自主映画の草分け的存在の一人で、それまでの業界セオリーを踏まずにCMディレクターから映画監督になった。

それが良いか悪いかは別にして映画監督の基礎修行を経なかった彼にとって、たゆまぬ実験的挑戦はアイデンティティーを保つ重要な要素だったのだろうか。

さてリアルタイムではなく後になってから観た私はというと、ファンだった金田一耕助物にブームの火付け役たる角川自身が半ば強引に幕引きを行い、しかもそれが悪ふざけともとられかねない内容だった事に失望をおぼえた。

勿論、作中の印象的な音楽にはとても惹きつけられたし、金田一の独白から切ないラストシーンに繋がる一連の流れは脈絡がどうこうを抜きにして好きである。

そして最近になり改めて見直した(初めて早送りせずに全編を観た)ところ、「この際だから気になる部分もいっそ受け入れ、破茶滅茶な世界観を楽しもう」と思えた。

主演の古谷一行氏はテレビドラマで大好評を博した金田一耕助そのままの熱演だし、戸惑いながらの演技だったらしい田中邦衛氏の等々力警部も良かった。

この映画では金田一耕助だけが従来の世界観を守るほぼ唯一の人間なのだが、周りに場違いの物が羅列され過ぎているせいで、逆に異質な存在として浮き出てくる。

統一感や脈絡に欠ける中に整合の取れた場面を入れて際立たせるのも同様である。

ラスト付近で金田一譚を露骨に揶揄するような台詞が重なるのはファンとしていささか歯痒いが、金田一自身のそれは自己肯定の為の自虐だと言い聞かせ、後は美しいエンディング曲に身を任せるとしよう。



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