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創作から興味ある事柄まで気まぐれに綴ります
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少し前のことになるが、ドグラ・マグラのブルーレイ版を購入したので、簡単にレビューしてみたいと思う。

なお、いつもと同じくネタバレは極力控えるので、その点はご了承いただきたい。

原作は1935年に刊行された夢野久作の探偵小説で、10年の推敲を経て世に出た力作だ。

「黒死館殺人事件」「虚無への供物」と並び、日本の探偵小説史上における三大奇書の一つとしても知られる。

これを初めて読んだ者はどこか精神に異常を来した様な感覚に陥ると言われるが、自分も軽度ながら身に覚えがある。

大袈裟なことを言うつもりは無いのだが、余りに感受性の強い人は原作に対して慎重に挑むべきかも知れない。

読み手側の受ける印象を熟考して練られた文章と展開は、思考的混乱へと導く設計がなされているからだ。

一方、今回紹介するドグラ・マグラは1987年に製作された映画で、主演の松田洋治氏や故・桂枝雀氏の怪演が話題になった作品である。

オープニングの「胎児よ 胎児よ 何故躍る 母親の心がわかって おそろしいのか」という不穏な言葉は原作の巻頭歌を引用したものであり、脳髄の地獄へ招き入れるに相応しい文句と言えるだろうか。

ただ、映画自体は割と淡々と進んでいくし、あからさまに恐怖を駆り立てる類の演出も殆どない。

また一連の事件は過去に起こった事であり、リアルタイムの進行においては、現実とも幻ともつかぬ主人公の記憶を呼び覚ます道程が描かれる。

当然ではあるが、原作は小説の形態において効果が出るような組み方で物語を構築しているので、それを映像作品として分解・再構築するにはさぞ骨が折れた事だろうと思う。

実際、映画を観て初めてドグラ・マグラの内容を理解したとの声も少なくないらしい。
(さすがに細部まで忠実な映像化とは言えないし、映画独自の解釈や表現、分かり易くする為の工夫も多いが)


狂気と悲劇と喜劇が奇妙に織り混ざったこの作品は、恐怖というより当惑を楽しむ事に似ていて、その点で原作と映画は確かに共通しているのである。



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