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創作から興味ある事柄まで気まぐれに綴ります
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今回紹介する『新幹線大爆破』は、1975(昭和50)に公開された東映の作品で、邦画におけるオールスターキャストのパニックアクション大作の口火を切った映画である。

新幹線に爆弾を仕掛けたと言う犯人から500万ドル(15億円)の莫大な身代金を要求され、当時の国鉄関係者や警察がこれの対処に当たるスリリングなストーリー。

犯人の使う爆弾は時速80キロになると起動し、その後は時速80キロ以下になると爆発するという厄介な代物で、高速鉄道である事や自動ブレーキシステムなどテクノロジーの進化がかえってアダとなる秀逸な設定だ(逆にこの特殊なシステムのせいで犯人の身元が割れる皮肉も効いている)

1500人の乗客を乗せたまま「止まる事が出来なくなった」高速列車が終点に着くまでに爆発を防げるか、ノンストップで繰り広げられる犯人と国鉄・警察側の攻防は邦画では中々観られない迫力である。

内容が内容だけに国鉄からは強力を得るどころか製作中止まで迫られた様だが、その影響でミニチュアを使った撮影に迫られ、あの成田亨氏らも参加して中々良い映像に仕上がった。

私は今回ブルーレイ版を購入したのだが、流石にいま観るとミニチュアなのが丸分かりのシーンが多いものの、往年の特撮映画好きとしてはこれが味に感じられて心地良い。

トラックの荷台の扉が開けられて見えないはずなのにナンバープレートを報告したり、犯人に気付かれないよう慎重な捜査が必要にもかかわらずパトカーを連なって行動したりとツッコミ所も多いが、スピード感や分かり易さ重視の演出を最優先にした故の事だろう。

また犯人らを人生どん詰まりの状況に追い込まれた人間として哀愁を持って描いており、ただ身代金だけにこだわっているのではなく、自分達を追い詰めた社会システムへの反抗も兼ねている。

ここが単なるパニックアクションと異なる点で、主犯を演じた高倉健の悲哀を込めた演技は特に印象的だ。

他の演者がねちっこい演技をしている(求められている)のとは対照的で、彼の異質に近いリアリティのある表現が観客の同情を強く呼ぶのだろう。

海外で上映された『新幹線大爆破』は犯人側の描写が大幅にカットされていたらしいが、例えそれでスピード感やエンタメ性が増しても、この映画の一番大事な部分が無いに等しいと思う。

運転士に指示を出す運転司令長を演じた宇津井健の最後の言葉が胸に響くのも、対照的な立場に居る高倉健らの存在があってこそである。

映画のラストではその結末に似つかわしくない飛翔感のある音楽が短く流れるが、夜空に飛び立つ機体に乗せて印象的な後味を我々に残す。

スピード感に満ちたパニックアクションの秀作だが、ただそれだけでは無いのが『新幹線大爆破』の魅力である。

まだ未見の方は是非ご覧いただきたい。



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